「古信楽(こしがらき)」という言葉を聞いたことはあっても、一般的な信楽焼と何が違うのかわからない方も多いのではないでしょうか。
信楽焼は、滋賀県甲賀市信楽町を中心につくられてきた歴史ある焼き物です。鎌倉時代中期ごろから本格的な生産が始まり、中世から現在まで焼き物づくりが続く「日本六古窯」のひとつに数えられています。
その長い歴史のなかでも、古い時代につくられた信楽焼は、一般に「古信楽」と呼ばれることがあります。
古信楽には、現代の信楽焼とはまた違った素朴な土味や、窯の中で炎と灰によって生まれた自然釉、焦げなどが見られます。作品によっては古陶磁や茶道具として評価されることもあり、骨董市場で取引されるものもあります。
この記事では、古信楽の特徴や一般的な信楽焼との違い、価値を見る際のポイント、高額買取につなげるために知っておきたいことを解説します。
古信楽とは?
「古信楽」という名称には、必ずしも「○年以前につくられたもの」という明確な年代区分があるわけではありません。
一般的には、中世から近世にかけてつくられた古い信楽焼や、骨董・古美術の分野で扱われる古い信楽焼を指して「古信楽」と呼ぶことがあります。
信楽では鎌倉時代中期ごろから焼き物の生産が始まりました。
当初は甕(かめ)・壺・鉢など、人々の暮らしや農業に使われる大型の焼き物が中心でした。14世紀頃になると信楽独自の作風が確立され、室町時代には窯の中で生じる自然な変化も信楽焼の魅力となっていきます。
さらに室町時代から桃山時代にかけて茶の湯文化が発展すると、信楽焼の素朴な風合いが茶人たちから評価され、茶壺や水指などの茶道具にも用いられるようになりました。
現在でも、信楽伝統産業会館では鎌倉時代から現代までの信楽焼が紹介されており、穴窯による窯変や茶の湯との関わりなどを見ることができます。
古信楽の代表的な特徴
古信楽の魅力は、華やかな絵付けではなく、土と炎によって生まれる自然な表情にあります。
作品を見る際に注目したい代表的な特徴を紹介します。
粗く力強い土の質感
信楽焼は、石英や長石などを含んだ土を使用することで知られています。
表面には細かな石粒が現れることもあり、滑らかな磁器とは異なる、ざらりとした力強い質感が生まれます。
古信楽では、この土そのものの表情が作品の大きな魅力になっています。
一見すると粗野に見えることもありますが、長い年月を経た焼き物ならではの風合いを楽しめます。
赤褐色の「火色・緋色」
信楽焼の特徴のひとつとして知られているのが、赤や橙色を帯びた「火色(ひいろ)」や「緋色」です。
窯の中で土が炎にさらされることで生まれる色合いで、作品全体が均一に発色するとは限りません。
淡い赤色から濃い褐色まで、一つの作品の中でも場所によって表情が異なることがあります。
こうした炎の痕跡をそのまま景色として楽しめるところも、古信楽の魅力です。
灰が溶けてできる自然釉
古い信楽焼では、釉薬を人工的に掛けずに焼き締められたものも多くあります。
薪を使って窯を焚くと、燃えた薪の灰が作品に降りかかります。
高温になることで灰と土の成分が反応し、ガラス質に溶けたものが「自然釉」です。
黄緑色や緑色などを帯びることもあり、窯の中で偶然生まれた模様が作品の大きな見どころになります。
灰かぶりや焦げによる景色
薪窯では、作品の置かれた場所や炎の流れによって、灰のかかり方や焼け方が変わります。
灰が厚く積もった部分や、炎が強く当たった部分には、濃い褐色や黒色の「焦げ」が現れることがあります。
反対側には赤みのある火色が残るなど、ひとつの器のなかに複数の表情が現れる場合もあります。
こうした窯変は一つとして同じものになりにくく、古信楽を鑑賞する大きな魅力です。
古信楽にはどのような種類がある?
古信楽というと壺を思い浮かべる方も多いですが、さまざまな種類があります。
代表的なものとしては、
- 壺
- 甕
- 種壺
- 茶壺
- 水指
- 花入
- 鉢
- 茶道具
などがあります。
特に中世の信楽では、農業や生活で使用する甕・壺・鉢が多くつくられていました。戦国時代になると茶陶としても利用されるようになり、信楽焼の用途は時代とともに広がっていきました。
そのため、同じ古信楽でも、「大きな壺」と「茶道具」では評価されるポイントが異なることがあります。
古信楽の価値を左右するポイント
古信楽だからといって、すべてが高額で取引されるわけではありません。
実際の評価では、年代や希少性、作品の出来、保存状態など、さまざまな要素が関係します。
制作年代
骨董品として古信楽を見る場合、いつ頃つくられた作品なのかは重要な要素です。
鎌倉・室町・桃山など古い時代までさかのぼる作品と、比較的新しい時代につくられた作品では、希少性が大きく異なる可能性があります。
ただし、見た目が古いからといって、年代を判断できるわけではありません。
土の状態や成形方法、焼成、形状など複数の要素を見る必要があるため、専門知識がない状態で年代を断定するのは避けたほうがよいでしょう。
自然釉や窯変などの景色
古信楽では、炎や灰によって偶然生まれた「景色」が鑑賞上の重要なポイントになることがあります。
例えば、
- 自然釉
- 灰かぶり
- 火色
- 焦げ
- 焼成による色の変化
などです。
自然釉が美しく流れていたり、火色と焦げのバランスが印象的だったりする作品は、鑑賞陶器として評価される場合があります。
単純に「きれいに焼けているか」ではなく、炎によって生まれた個性そのものが魅力になるところが古信楽の特徴です。
形や大きさ
壺や花入などの場合、造形のよさも評価のポイントになります。
口、肩、胴、底までのバランスや、全体の力強さなども作品の印象を左右します。
大型の壺だから必ず高額になるわけではありませんが、古い時代の大型作品で保存状態がよいものなどは、希少性を含めて評価される可能性があります。
保存状態
骨董品では保存状態も重要です。
古信楽の場合も、
- 大きな割れ
- 欠け
- ヒビ
- 修復
- 後から加えられた加工
などがあるかどうかが確認されます。
ただし、何百年も前の陶器であれば、多少の傷や使用感があること自体は珍しくありません。
傷があるからといって「価値がない」と自己判断する必要はありません。
年代や希少性、作品そのものの魅力などを含めて総合的に評価されます。
来歴や付属資料
古い陶磁器では、「どこから伝わったものなのか」という来歴が価値を判断する材料になることがあります。
例えば、
- 古い箱
- 箱書き
- 鑑定書
- 購入時の資料
- 展覧会の図録
- 旧蔵者についての資料
などが残っている場合は、作品と一緒に保管しておきましょう。
箱が汚れていたとしても、自己判断で処分しないことが大切です。
古信楽の高額買取につなげるポイント
古信楽と思われる陶器が自宅や蔵から出てきた場合、査定へ出す前にいくつか注意したいポイントがあります。
無理に洗ったり磨いたりしない
古い陶器がホコリや土で汚れていると、きれいにしてから査定へ出したくなるかもしれません。
しかし、古信楽と思われるものは無理に洗わないほうがよいでしょう。
洗剤やブラシで強くこすると表面を傷めてしまう可能性があります。
また、移動や水洗いの際に落として割ってしまうリスクもあります。
軽くホコリを払う程度にとどめ、そのまま専門家に見てもらうほうが安心です。
箱や古い資料を捨てない
作品が入っていた木箱や紙、古い資料などが残っている場合は、すべて一緒に査定してもらいましょう。
一見すると価値がなさそうな古い箱でも、箱書きから作品の来歴がわかることがあります。
「陶器だけ残して箱は捨てる」といった整理は、査定を受けてからでも遅くありません。
壺の底や内部を自分で削らない
陶器の底に付着物や汚れがある場合でも、金属製のヘラなどを使って削るのは避けましょう。
底部や口縁、内部の状態も、年代や制作方法を判断する材料になる場合があります。
現状を変えず、そのまま査定してもらうことをおすすめします。
大型の古信楽は無理に運ばない
古信楽には大型の壺や甕もあります。
長期間同じ場所に置かれていた大型陶器を無理に持ち運ぶと、落下や衝突によって割れてしまう可能性があります。
蔵や実家にある大きな作品であれば、出張査定や写真査定に対応している業者へ相談する方法もあります。
「古そうな信楽焼」は価値がわかる業者へ相談する
古信楽の査定で難しいのは、一般の方が見ただけでは年代を判断しにくいことです。
信楽焼は現在まで長く生産が続いているため、古い時代の作品を意識して制作された比較的新しい焼き物などもあります。
また、「古信楽風」の作品や現代作家による作品が価値を持つ場合もあり、単純に古いか新しいかだけでは判断できません。
そのため、
- 昔から家にある
- 蔵から出てきた
- 木箱に入っている
- 茶道具と一緒に保管されていた
- 自然釉が見られる
- かなり古そうだが年代がわからない
といった信楽焼の場合は、古陶磁・信楽焼・茶道具などの価値がわかる買取業者や専門家へ相談することをおすすめします。
フリマサイトやネットオークションで売ることもできる?
古い信楽焼をフリマサイトやネットオークションへ出品する方法もあります。
自分で販売価格を設定できることや、陶器を探している購入者へ直接販売できることはメリットです。
一方で、本当に古信楽なのか、いつ頃の作品なのかを判断できない状態では、価格設定が難しくなります。
古い信楽焼と思って安く出品したものが実は価値のある品物だった場合、適切な評価を受けないまま売却してしまう可能性もあります。
反対に、新しい作品を古信楽だと誤認して出品してしまうことにも注意が必要です。
そのため、詳細がわからないものについては、一度専門家の査定を受け、作品についてある程度確認してから売却方法を考えるのもよいでしょう。
古信楽と思われる陶器を見つけたときのチェックポイント
実家整理や蔵整理で古い陶器が出てきた場合は、次の点を確認してみてください。
- いつ頃から家にあるのか
- 木箱に入っているか
- 箱に文字や墨書があるか
- 作品と一緒に古い資料が残っていないか
- 茶道具として保管されていたものか
- 自然釉や火色、焦げなどが見られるか
- 割れや修復跡がないか
- 家族から由来を聞いたことがないか
ただし、これらに当てはまるからといって古信楽だと断定できるわけではありません。
判断が難しい場合は、写真を撮り、専門知識のある業者へ相談してみるとよいでしょう。
まとめ|古信楽は年代だけでなく土・炎・来歴などを含めて評価されます
古信楽は、信楽で古くからつくられてきた陶器を指す言葉として使われています。
中世の信楽では甕・壺・鉢などがつくられ、その後、茶の湯文化の発展とともに茶陶としても評価されてきました。
古信楽の魅力は、土の素朴な質感と、薪窯によって生まれる自然釉や火色、灰かぶり、焦げなど、一つひとつ異なる景色にあります。
買取時には、
- 制作年代
- 希少性
- 造形
- 自然釉や窯変
- 保存状態
- 箱や付属資料
- 来歴
などを総合的に見ながら評価されます。
そのため、「古そうだから高い」「汚れているから価値がない」と見た目だけで判断することはできません。
特に、昔から家に伝わっているものや、蔵から出てきた壺、木箱に入った作品などは、処分する前に一度確認することをおすすめします。
古信楽かどうかわからない場合も、無理に洗ったり自分で年代を判断したりせず、まずは古陶磁や信楽焼の価値がわかる専門業者へ相談することが、適正な評価につなげるポイントです。
