信楽焼と聞いて、たぬきの置物を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
大きな笠をかぶり、徳利と通い帳を持った愛嬌のある姿は、飲食店や商店の入口、一般家庭の玄関などでもよく見かけます。
実は、信楽焼のたぬきは単なるかわいらしい置物ではありません。
特徴的な姿の一つひとつに意味があり、商売繁盛や金運、招福などを願う縁起物として親しまれています。
この記事では、信楽焼のたぬきに込められた意味や「八相縁起」、なぜ信楽焼とたぬきが結びついたのかについてわかりやすく解説します。
信楽焼のたぬきにはどんな意味がある?
信楽焼のたぬきは、古くから縁起のよい置物として親しまれています。
特に知られているのが、たぬきという言葉を「他抜き」とかけて、「他より一歩抜きん出る」という意味を持たせる考え方です。
そのため、商売繁盛や仕事運、出世などを願う縁起物として、商店や飲食店などに置かれるようになりました。
また、信楽焼のたぬきは、ただ「たぬきだから縁起がよい」というだけではありません。
笠や目、お腹、徳利など、たぬきの姿を構成する8つの部分には、それぞれ異なる願いが込められています。
これを「八相縁起(はっそうえんぎ)」と呼びます。信楽町観光協会や滋賀県も、信楽焼のたぬきの特徴として八相縁起を紹介しています。
信楽焼のたぬきに込められた「八相縁起」とは
信楽焼のたぬきをよく見ると、大きな笠や目、丸いお腹、徳利など、独特の姿をしています。
これらは単なるデザインではなく、それぞれに縁起のよい意味が込められています。

1. 大きな笠|災難から身を守る
たぬきがかぶっている大きな笠には、雨や風などから身を守るという意味があります。
そこから転じて、思いがけない災難に備え、普段から準備を怠らないようにするという願いが込められています。
商売や生活では、いつ何が起こるかわかりません。
笠には、突然のトラブルにも落ち着いて対応できるように、日頃から備えておくことの大切さが表されています。
2. 大きな目|周囲をよく見て正しく判断する
信楽焼のたぬきは、大きな目をしています。
この目には、周囲をよく見渡し、さまざまなことに気を配りながら、正しい判断をするという意味があります。
商売だけでなく、人間関係や日々の暮らしでも、周囲を見る力や物事を見極める力は大切です。
大きな目は、そうした「よく見ること」の大切さを表しています。
3. 笑顔|愛想よく人と接する
たぬきの愛嬌のある笑顔にも意味があります。
いつも笑顔を忘れず、人と気持ちよく接することが、よい人間関係や商売繁盛につながるという考え方です。
信楽焼のたぬきが飲食店や商店の入口に置かれていることが多いのも、こうした「人を迎える縁起物」としての意味と相性がよいからでしょう。
4. 徳利|人徳を身につける
たぬきが手に持っている徳利には、飲食に困らないことや、人としての徳を身につけるという意味が込められています。
単にお酒を表しているのではなく、人との付き合いや豊かな暮らし、人徳を大切にする願いが表現されています。
5. 通い帳|信用を大切にする
もう片方の手に持っている帳面は、「通い帳」などと呼ばれます。
昔の商売では、商品を掛けで売買し、その記録を帳面につけることがありました。
そのため、通い帳には商売では信用を大切にするという意味が込められています。
長く商売を続けるうえでは、一度の利益だけでなく、お客様や取引先との信頼関係が重要です。
6. 大きなお腹|冷静さと大胆さを持つ
信楽焼のたぬきといえば、ぽっこりとした大きなお腹も特徴です。
このお腹には、物事に動じない冷静さと、必要なときには大胆な決断ができる度量を持つという意味があります。
「腹を据える」という言葉があるように、落ち着いて物事に向き合う姿勢を表していると考えるとわかりやすいでしょう。
7. 大きな金袋|金運に恵まれる
たぬきの下腹部に表現される大きな金袋には、金運や財運への願いが込められています。
お金に困らず、必要なときに自由に使えるほどの金運に恵まれるように、という意味があります。
商売繁盛の縁起物として信楽焼のたぬきが親しまれている理由のひとつといえるでしょう。
8. 太いしっぽ|物事を最後までしっかり終える
最後は、たぬきの太いしっぽです。
しっぽには、物事の終わりをしっかりと締めくくり、着実に成果を残すことが幸福につながるという意味があります。
始めるだけではなく、最後までやり遂げることの大切さが表されています。
なぜ信楽焼といえば「たぬき」なの?
信楽焼は滋賀県甲賀市信楽町周辺でつくられている焼き物で、中世から焼き物づくりが続く、日本六古窯のひとつです。信楽町観光協会によると、信楽では13世紀ごろから焼き物づくりが続いています。
現在では「信楽焼=たぬき」というイメージが強くありますが、信楽焼でつくられているのはたぬきだけではありません。
食器や花器、壺、茶道具、建築用の陶器など、さまざまなものがつくられています。
それでもたぬきのイメージがこれほど強くなった背景には、信楽でたぬきの置物が盛んにつくられるようになったことに加え、1951年の昭和天皇の信楽訪問があります。
滋賀県によると、昭和天皇が信楽を訪れた際、日の丸の旗を持たせた多数の信楽焼のたぬきが沿道に並べられました。
その光景を見た昭和天皇が歌を詠み、それが報道されたことで、信楽焼のたぬきが全国的に知られるきっかけになったとされています。
現在では、信楽の町を歩くと、大小さまざまなたぬきの置物を見ることができます。
信楽焼のたぬきはどこに置くとよい?
信楽焼のたぬきには、「必ずこの場所に置かなければならない」という厳密な決まりがあるわけではありません。
縁起物として置くのであれば、目的に合わせて場所を選ぶとよいでしょう。
店舗の入口
商売繁盛を願う場合は、お店の入口や店頭に置くのが定番です。
笑顔や通い帳などに込められた意味を考えると、お客様を迎える場所に置くのは信楽焼のたぬきらしい飾り方といえます。
玄関
一般家庭では、玄関に置かれることも多くあります。
玄関は家の中と外をつなぐ場所なので、災難から身を守るという笠の意味や、福を招く縁起物としての意味ともなじみます。
庭や屋外
信楽焼のたぬきは、庭先や店舗の軒先などでもよく見られます。
大きなサイズのものは存在感があるため、庭のアクセントとして楽しむこともできます。
信楽焼のたぬきは商売繁盛だけの縁起物ではありません
信楽焼のたぬきというと、「商売繁盛の置物」というイメージが強いかもしれません。
しかし、八相縁起を見てみると、その意味は商売だけに限られていないことがわかります。
周囲をよく見ること、人との信用を大切にすること、笑顔を忘れないこと、冷静に判断すること、最後までやり遂げることなど、日々の生活にも通じる意味が込められています。
そのため、店舗だけでなく、一般家庭の玄関や庭に置いたり、開店祝いや新築祝いなどの贈り物として選んだりすることもできます。
古い信楽焼のたぬきには価値がある場合もあります
実家や蔵、店舗の整理をしていると、昔から置かれていた信楽焼のたぬきが見つかることがあります。
信楽焼のたぬきは数多くつくられているため、すべてに高い価値があるわけではありません。
一方で、古い時代につくられたものや、特定の作家・窯元によるもの、大型作品などは、骨董品や陶芸作品として評価される場合があります。
「古くて汚れているから価値がない」
「たぬきの置物だから安いだろう」
と自己判断して処分するのではなく、古いものについては一度、信楽焼や陶磁器に詳しい専門業者へ相談してみるのもよいでしょう。
まとめ|信楽焼のたぬきには8つの縁起が込められています
信楽焼のたぬきは、愛嬌のある見た目だけでなく、さまざまな願いが込められた縁起物です。
特に有名なのが「八相縁起」で、
- 大きな笠
- 大きな目
- 笑顔
- 徳利
- 通い帳
- 大きなお腹
- 大きな金袋
- 太いしっぽ
の8つに、それぞれ意味があります。
商売繁盛や金運だけでなく、信用を大切にすることや、周囲をよく見ること、笑顔で人と接することなど、日々の暮らしにも通じる教えが込められています。
何気なく見かける信楽焼のたぬきも、それぞれの意味を知ってから見ると、これまでとは少し違った印象に見えるかもしれません。
また、自宅や実家に古い信楽焼のたぬきがある場合は、年代や作者などによって評価される可能性もあります。
処分する前に、信楽焼や骨董品を扱う専門業者へ相談してみるとよいでしょう。
